第291章 好感を抱く

曽我若菜は一目で分かった。目の前の人は藤田清明だった。

あの日以来、彼のすべての資料を調べ尽くし、ようやく医学専門誌で彼の写真を見つけることができた。

彼女は知っていた。彼との縁があるはずだと。必ずまた会えると。まさか神様がこんなにも優しく、彼を自分の側に送ってくれるとは思わなかった。

彼女は強情で冷たい目つきで彼を一瞥しただけで、すぐに視線を逸らした。自分のやり方で彼を落とすつもりだった。プライドを保ちながら、彼を無視し、彼から話しかけてくるのを待つことにした。

男というものは、追いかければ追いかけるほど見向きもしなくなるものだ。

無視すれば、今度は犬のように寄ってくる。

藤田清明の短気な性格を見れば、まさにそういうタイプの男だと確信できた。

曽我軒助も、水野日幸と一緒にいたイケメンにここで会うとは思わなかった。しかし不思議なことに、彼一人だけで、水野日幸の姿は見えなかった。あの生意気な女は後ろについてくるのかもしれない！

曽我逸希は彼の表情を見て察し、尋ねた。「このガキは、日幸と一緒にいた男か？」

劇場にいた奴か？

しかし今見ると、劇場にいた時とは全く別人のようだった。全身から漂う気品が、まるで別人のように変わっていた。

曽我軒助は頷いて答えた。「水野日幸は後ろにいるはずです。父さん、もう個別に探す必要はありませんよ。」

曽我逸希は必ず手に入れるという笑みを浮かべ、目の前の若者に対する態度を変え、呼び方まで変えた。「この若者も、並の人物ではないな。」

水野日幸が何人の男と関係を持とうと構わない。むしろ全ての男の心を掴んでくれた方がいい。もちろん、貧乏人ではなく、名門の子女でなければならない。そうすれば、曽我家が得られる助力はより大きくなるはずだ。

川村染は彼が劇場で傲慢で人を見下していた人物だと気付かず、曽我逸希たちの会話も聞いていなかった。ただ隣の娘を見ると、若菜はあの若者にとても興味を持っているようだった。

曽我若菜は既に心の中で計算し始めていた。もし彼が自分から近づいてこなければ、どんな方法で再び彼の注意を引けばいいだろうか？

藤田清明は心の中で舌打ちした。縁起でもない、またこの厚かましい一家に出くわすとは。

しかも、あの悪ガキもここにいない。

昨夜、二番目の兄に確認したところ、悪ガキはこのフライトに乗るはずだった。