水野楓も呆然としていた。大晦日の夜遅くに宅配便とは、正気の沙汰ではない。不機嫌そうに声を潜めて言った。「俺にも分からねぇよ。どいつだよ、まさか小娘の好きな奴じゃないだろうな!」
藤田清明の目が危険な色を帯びた。首を振って、確信を持って言った。「違う」
目の前のこの男は、ただの配達人に過ぎない。彼の當主こそが、あの悪戯っ子を攫おうとしている本人なのだろう。
あの人は一体どんな身分なのか、使いに出した使い走りですら、こんなオーラを放っているとは。
藤原敦は去った。
水野日幸はドアを閉め、蜜を食べたような甘い気持ちで、目元も眉も甘い笑みに溢れ、宝物のようにプレゼントを持って部屋へ向かった。
水野楓は手癖が悪く、彼女からプレゼントを奪い取り、素早く中身を取り出した。見ると紅包だった。眉をひそめ、軽蔑した表情で言った。「お年玉か、なんて俗っぽい」
水野日幸は怒って彼を睨みつけ、取り返すと大切そうに抱きしめた。「死にたいの?」
水野楓は彼女を見て、嫌そうに舌打ちした。「こんな夜中にプレゼントを届けに来て、紅包一つだけとか、お前の知り合いってどんな連中だよ!」
水野日幸は歯を見せて威嚇した。「関係ないでしょ、水野楓のゴロツキ!」
紅包がどうしたの?紅包だけでも嬉しいじゃない、お正月はお年玉をもらうものでしょ?
藤田清明も眉をひそめ、心の中は疑問だらけだった。年越しの瞬間にわざわざ人を遣わしてプレゼントを届けさせるのに、紅包一つだけなんてあり得ないだろう!
水野楓は水野日幸が紅包を宝物のように大事にしているのを見て、藤田清明に肘で軽く触れ、尋ねた。「安っぽすぎだろ!お前…」
言葉は途中で途切れた。
出雲絹代が突然空を指差して驚いた声を上げた。「あっちを見て、綺麗な花火、猫の肉球よ」
水野日幸が顔を上げると、遠く離れた場所で猫の肉球が空に咲いているのが見えた。肉球の模様は次第に近づき、花火の爆発音もだんだん鮮明になってきた。
ぷっくりとした肉球が、空中で可愛らしい猫の顔を形作り、ドーンと炸裂した時、空には「新年快楽」という四文字が鮮やかに残った。
藤田清明は空の花火ショーを見つめ、目の奥に深い淵のような色が宿った。体の横に下ろした拳がゆっくりと締まっていく。やはり紅包だけじゃないと思った。花火ショーか、本当に手の込んだことを。