第296章 飴を預かる

石田文乃は羨ましそうな目つきで服を見つめていた。叔母さんは自分が来すぎると思っているのかな、うるさくて面倒くさいと思っているのかな。どうして自分の新しい服がないのだろう。新しい服を着たいな。

「これはあなたのよ」水野日幸は笑いながら空色の包装袋を彼女の胸に押し付けた。「一式買ってきたの。靴下も靴もあるわ」

「やっぱり!私はこんなに可愛いから、叔母さんは私のことが大好きなんだよね」石田文乃は興奮して、すぐに服を抱きしめて水野日幸の手を引っ張った。「着替えに付き合って!新しい服を着たいの」

水野日幸は軽蔑したように言った。「その服は正月用よ」

石田文乃は「今まさに正月じゃない」

水野日幸は彼女が着替えるのを見ながら尋ねた。「お正月はどこで過ごすの?」

石田文乃は新しい服を見て嬉しそうに笑った。「母は若い彼氏と一緒に海外旅行に行って、父は新しい奥さんと実家に帰るの。私は緒羽様と約束して、二人で過ごすことにしたの」

一橋御祖母も家に来て過ごすように言ってくれたのに。

でも、他人が人の家で過ごすのはよくないわ。

水野日幸は彼女が楽しそうに話すのを聞いていたが、その寂しさは当事者にしかわからない。お正月なのに、どの家も賑やかに家族団らんしているのに、一人で過ごすのは辛いものだ。

石田文乃は新しい服を着て、子供のように喜んで、鏡の前で何度も回転して、振り返って水野日幸に聞いた。「鏡の中の小さな仙女は誰?なんでこんなに可愛いの?」

水野日幸は彼女に笑わされた。時には何も考えないのも良いものだ。目の前のこの子を見てみなさい。知足常楽を知っていて、ちょっとしたことで、こんなに喜べるのだから。

石田文乃が水野日幸と一緒に降りていくと、辻緒羽もリビングにいた。

辻緒羽は彼らに挨拶をして、石田文乃を見て、良い言葉が見つからなかった。「おや、まだ一月なのに、サンタクロースのおばあちゃんはもう仕事始めかい?随分と勤勉だね」

出雲絹代が石田文乃にプレゼントしたウールのコートは赤色で、着ると華やかで綺麗だった。さっきも無理やり水野日幸から白いニット帽を借りて、確かにちょっとクリスマスっぽく見えた。

石田文乃は彼を睨んで「あなたに何がわかるの?センスゼロよ」