水野日幸は自分の作品に満足していた。とても綺麗に書けたけど、お兄さんが気に入ってくれるかどうかは分からない。
写真を撮って送って、綺麗かどうか聞きたい気持ちもあったが、サプライズにしたいという思いもあった。少し迷った末、写真は送らないことにした。
「行きましょう」水野日幸は振り向いて、藤田清明が目を細めて笑っているのを見た。
藤田清明は鼻で笑い、心の中では不愉快だった。隣人は誰なのかと聞きたかったが、言葉を飲み込んだ。彼女の視線がすでに移っているのが見えた。
彼が視線を追うと、向こうから美しい少年が、可愛らしい女の子を支えながらこちらに向かってくるのが見えた。その女の子は足を引きずっていた。
水野日幸はすでに迎えに行っていた。向こうの二人は石田文乃と一橋渓吾に違いなかった。目に興味が浮かび、彼らに手を振った。
「日幸ちゃん」石田文乃は泣きそうな声で、とても悔しそうに「足首を捻っちゃった」と言った。
水野日幸:……
藤田清明は後ろに立っていた。
石田文乃は何故か、一橋渓吾に支えられながら、少し緊張していた。水野日幸しか見えていなかったが、近づいてきて初めてイケメンに気付き、目が釘付けになった。
やばい!
超イケメン!
最高級のイケメン!
一橋渓吾は水野日幸の後ろにいる少年をすでに見ていた。
その人は背が高く、気品があり、顔立ちが整っていて、薄暗がりに半分隠れていることで、さらに神秘的な雰囲気を醸し出していた。
水野日幸は彼女のことをよく知っていた。イケメンを見ると歩けなくなるのだ。
石田文乃は恩知らずで、すでに一橋渓吾を押しのけ、水野日幸の腕を掴み、目を輝かせながら、イケメンの前では控えめに、小声で「日幸ちゃん、すごいじゃん。ウィーンに行っただけでこんなイケメンを連れて帰ってくるなんて、本当に凄すぎ」と言った。
あぁぁぁ!
どうして自分にはこんな運がないのだろう。こんなレベルのイケメンに出会って、家まで連れて帰れるなんて?
「彼が自分で付いてきたの」水野日幸は彼女に警告した。そんな言い方をされると、まるで人身売買犯みたいじゃないか。