水野日幸は自分の作品に満足していた。とても綺麗に書けたけど、お兄さんが気に入ってくれるかどうかは分からない。
写真を撮って送って、綺麗かどうか聞きたい気持ちもあったが、サプライズにしたいという思いもあった。少し迷った末、写真は送らないことにした。
「行きましょう」水野日幸は振り向いて、藤田清明が目を細めて笑っているのを見た。
藤田清明は鼻で笑い、心の中では不愉快だった。隣人は誰なのかと聞きたかったが、言葉を飲み込んだ。彼女の視線がすでに移っているのが見えた。
彼が視線を追うと、向こうから美しい少年が、可愛らしい女の子を支えながらこちらに向かってくるのが見えた。その女の子は足を引きずっていた。
水野日幸はすでに迎えに行っていた。向こうの二人は石田文乃と一橋渓吾に違いなかった。目に興味が浮かび、彼らに手を振った。