第294章 どんな兄

大晦日の二日前の夜、海外からの便には迎えの人がいて、空港は大変賑やかで、人々で溢れていた。

水野日幸は自分の大きな写真をすぐに見つけた。その上には赤い大きな文字で「娘よ、パパはここだ!」と書かれていた。

藤田清明もそれを見た。彼女が美しいからこそ、大きな写真の中の少女は妖精のように生き生きとして美しく、まるで光のようで、一目見ただけで魅了されてしまう。ただ、その横断幕の文字が写真全体の調和を台無しにしていた。

横断幕を持っていたのは、少し太めの中年男性で、とても元気そうな様子だった。典型的な日本人の顔立ちで、太い眉と大きな目、面長な顔つき、美男子とは言えないが、なかなかハンサムな顔立ちだった。

彼は彼の写真を見たことがあった。あの悪戯っ子の財布の中に、家族三人の写真があった。写真の中の男性は目の前の男性よりもずっと太っていたが、顔立ちは見分けがついた。

水野春智も娘をすぐに見つけ、嬉しそうに横断幕を振りながら、興奮して大声で叫んだ。「娘よ、ここだよ、パパはここだ!」

水野日幸は嬉しそうに小走りで近づき、そのまま男性の胸に飛び込んだ。「水野」

藤田清明は彼女がこんなに嬉しそうな様子を見たことがなかった。まるで籠から解放された小鳥のように、全身が喜びと歓びに満ちあふれていて、彼の抑圧されていた気持ちも少し晴れた。

彼女には実の両親の愛情がない。

でも養父母に愛され、大切にされているのは幸運なことだ。

彼は自分の妹も、彼女のように良い家庭に恵まれ、家族の小さなお姫様として育ってほしいと願っていた。

水野春智は娘を見て尋ねた。「スーツケースは?」

水野日幸は振り返って藤田清明を指差し、目を細めて笑った。「あそこよ!」

藤田清明はすでに側に来ていて、目の前の男性に丁寧に挨拶をした。「おじさん、こんにちは」

水野春智は水野日幸を見てから、警戒心満々で目の前のイケメン青年を見た。「君は誰だ?」

藤田清明は彼にそう見られて、なぜか緊張してしまい、言葉に詰まりながら答えた。「僕は彼女の兄です!」

水野春智は眉をひそめ、さらに警戒を強めた。「君が彼女の兄なら、私は彼女の父親だぞ!」

娘が大きくなったから、誰を見ても狼に見えてしまう。目の前のこいつも、きっと自分の大切な娘を奪おうとしているに違いない!

藤田清明:……

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