第307章 新しい生活を迎える

水野春歌は黙っていた。実際、彼女も心の中で日幸の言うことはもっともだと思っていた。

「分かった。渡辺鶯とも相談してみよう」水野春雄はもう少し考える必要があった。

彼らにとって、そう簡単に引っ越せるものではなかった。何十年も暮らした故郷なのだ。弟のように幼い頃から外で頑張り、家を離れることに慣れているわけではない。急に引っ越すとなると、やはり心残りが多かった。

水野春智と出雲絹代夫婦は二人を説得し続けたが、故郷を離れることがそう簡単ではないことも分かっていた。様々な雑事や心配事があるのだ。

水野楓も話に加わった。この小さな町では、人生は見通しがきいてしまう。父も叔父のように、実は冒険心があるのだ。野心のない男などいないし、現状に満足している者などいない。

より多くのお金を稼ぎ、家族により良い生活をさせることは、誰もが望むことだ。