第311章 胸に衝突

水野春雄は妻と相談した後、決断を下し、彼女を見つめながら言った。「春歌に話してみて、彼女の意見を聞いてみて。準備させてあげて。」

川村さんは顔中が花が咲いたように喜んでいた。男性側が言うには、女性側が会うことを承諾すれば、仲介料として四万円を支払うとのこと。口を動かすだけで四万円が手に入るのだから、嬉しくないはずがない。

渡辺鶯は水野春歌を探しに行き、彼女の意向を確認しようとした。仲人に返事をしなければならないからだ。春歌は家にいなかったので、電話をかけると、友達の永井綾芽の花屋にいることがわかった。簡単に状況を説明し、午後に男性と会うので早く帰って準備するように伝えた。

春歌は電話を切って言った。「綾芽、私、帰らないと。」

永井綾芽は彼女が心を開ける唯一の親友で、幼い頃からの付き合いで、彼女が目が見えないことを一度も気にしたことがなかった。

綾芽は彼女を見つめ、ため息をついた。「また両親があなたに見合いを設定したの?会いたくないなら会わなくていいのよ。何でも両親の言うことを聞く必要はないわ。あなたったら、いつになったら断ることを覚えるの。」

春歌は優しく微笑んで言った。「大丈夫よ。ただ会うだけで、付き合うことを決めたわけじゃないから。」

両親が自分のために良い家庭を見つけ、頼れる人を探してくれようとしているのはわかっていた。断れば、きっと悲しむだろう。

「まあ、あなたがそう決めたなら、私も何も言わないわ。」綾芽は手に持っていた花束を彼女に渡した。「これ、持って帰って。」

彼女の言葉が終わるか終わらないかのうちに。

外から数人の男性が店に入ってきた。

先頭の男性が店内を見回して言った。「カサブランカの花束を一つください。見栄えの良い、格調高い感じで包んでください。」

横にいた人が笑い出し、からかい始めた。

「どんなに綺麗に包んでも意味ないじゃん。いとこの見合い相手の女、目が見えないんでしょ?」

「そうだよ。いとこは何でそんな子に目をつけたんだろ。目が見えない人なんて、手伝えないどころか、面倒なだけじゃない?」

「何が気に入ったかって?きれいだからに決まってるでしょ。写真見てないの?すごくきれいなんだよ。いとこは見た目重視の人だから、美人が好きなんだよ。」