第315章 人格が悪い

ケーキ屋には二人しかいなかった。客の水野春歌と、店番をしている女の子。その子は店主の娘で、高校生だった。

女の子はイヤホンをつけながら『笑江山』を見ていた。最新話を見終わると、また最初から見始め、すでに何度も見返していた。見終わった後、同情的な目で水野春歌を見上げた。

もう二時間も経っているのに、春歌姉のお見合い相手の男性はまだ来ていない。きっと来る気がないのだろう。

春歌姉も可哀想だ。目が見えないのに、しかも待ち合わせにドタキャンされるなんて。その男性はきっとろくな人間じゃない。来られないなら一言言えばいいのに、女の子を待たせっぱなしにするなんて、何様のつもり?

彼女は、その男性が春歌姉を馬鹿にしているんじゃないかとさえ思えた。

スマートフォンを置き、立ち上がって、水野春歌に帰ろうと声をかけようとした。外は雨が降っているし。