第324章 曽我言助の歌は歌わない

誰もが最初から強者ではない。一歩一歩上り詰めてきたのだ。若者を軽んじるなかれ。

「嫌よ」木村鷺は目を真っ赤にして怒った。「へつらうなんて、私にはできない。あの人たちに頭を下げて取り入るなんて」

彼女は彼らが大嫌いで、目の前から消えてくれればいいのにと思っていた。

「お前はな、親に甘やかされすぎたんだ」江川鷹山は溜息をつき、彼女の様子を見て厳しく警告した。「彼らと仲良くしなくてもいい。でも、彼らを怒らせたり、敵に回したりするのは止めろ。そうでないと、お前が困ったときに、叔父さんも助けられなくなる」

木村鷺は低い声で叫んだ。「あの人たちがそんなに偉いの？」

叔父さんは変わってしまった。もう私のことを可愛がってくれない、理解してくれない。助けてくれないどころか、水野楓に取り入れろなんて言う。そんなことできるわけない！

江川鷹山は顔を曇らせた。「お前のそのお嬢様の気性は直さないとダメだ。私たちの前で暴れるのはまだいい、私たちはお前を甘やかしているからな。でも社会に出たら、そんな無法な振る舞いは通用しない。もし手ごわい相手に出くわしたら、私たちも助けようがない。権力のある人が皆、夏目之沢のような人ばかりじゃないんだ」

金持ちや権力者ほど控えめなものだ。人を見下したり、敵に回したりすれば、最後に損をするのは自分自身だ。因果応報は自分で背負わなければならない。

「水野楓のこと？水野楓が何か偉い人なの？何の権力があるっていうの？」木村鷺は叱られて、ますます水野楓を憎むようになり、嘲笑った。「あの人の両親は町で小さな食堂をやってるだけじゃない。姉さんは目が見えないのよ」

「木村鷺！」江川鷹山は腹立たしげに手を上げかけたが、自制して下ろした。「いいだろう、私にはお前を制御できない。両親に言って、しっかりとしつけてもらおう」

「好きにすれば」木村鷺はこんな屈辱を受けたことがなく、考えれば考えるほど腹が立って、怒って走り去った。

江川鷹山は顔を青くして怒った。この子は大きくなるにつれて言うことを聞かなくなり、分別がなくなってきた。男の子なら殴ったり叱ったりできるが、女の子は叩くことも叱ることもできない。

応接室にて。

水野楓はもう出て行っていた。