第349章 あなたが嫌いじゃない

藤田清義は慌てることなく、目の奥に興味を帯びた色が浮かんだ。「確かに、なぜ弟がお前にだけ興味を持っているのか知りたいんだ」

次男は理性的で冷静な性格で、彼女が母親に似た容姿を持っているからとか、彼女の悲惨な境遇だけで、こんなに優しくするはずがない。

三男は感情的すぎるところがあるが、決して馬鹿ではない。誰と付き合えるか、誰と付き合えないか、相手が自分に対して別の意図を持っているかどうか、誰よりもよく分かっているはずだ。

目の前のこの小娘は、賢く、冷静で、謎めいていて、話し方さえも的確で容赦がない。

もし彼女がこの手で自分の注意を引こうとしているのなら、おめでとう。成功だ。今や彼は彼女に非常に興味を持っている。

水野日幸は冷笑を浮かべ、自分の手を振った。「1億円。1億円くれたら、今後あなたの弟たちに関わらないことを約束するわ」

遊びたいの？

誰が誰を恐れているというの！

最後まで付き合ってやる。

彼女は人に振り回されるのが大嫌いだった。頭脳戦で勝てないなら、不意打ちをかけて彼の計画を台無しにし、怒らせて追い払い、二度と彼女の前に現れないようにしてやる。

あるいは、彼に嫌われて、彼女を見るたびに消えてほしいと思わせる。

互いに嫌い合うのが一番いい。

「お前にそれだけの価値があると思うのか？」藤田清義の端正な顔には感情の動きは全くなく、目の奥はますます冷たくなっていった。

この小娘は主客転倒を狙っているのか。そんなに人に支配されるのが嫌なのか？

「私は賢くて可愛くて優しくて寛容よ。この値段でもあなたにとっては安いくらいよ」水野日幸は口を押さえ、花が揺れるように笑いながら、目には警告の色を満たしていた。「だから藤田さん、私を試そうなんて思わないで」

彼女はこの感覚が好きではなかった。自分の感情まで彼に掻き乱され、コントロールできない感覚は、彼女を不安にさせ、イライラさせ、最悪だった。

彼女は生まれてこのかた、人に何度も試されることが大嫌いだった。

彼が何を企んでいるにせよ、自分を弄ぶことは絶対に許さない。特に自分が不利で、押さえつけられている状況では。

「水野お嬢様、実はお金を要求すべきではないんですよ」藤田清義の細長い玉のような指が、突然彼女の顎を掴み、指の腹が彼女の頬に触れようとした瞬間、下半身に寒気を感じた。