出雲絹代は恐縮したものの、彼の態度が断固としていたため、客人を一緒に行かせるしかなかった。
彼女は娘のことを一番よく分かっていた。娘は藤田家のこのお兄さんに対して何か変な感じで、まるで偏見を持っているようだった。
水野日幸は初めて社長様とスーパーに買い物に行った。藤田清義のその出で立ちと容姿では、どこに行っても輝く存在で、目立ち、まさに社長様そのもので、振り返り率は百パーセントだった。
ここは生活エリアで、通りの両側には軽食店が並び、何でも売っていた。午後五時半は、ちょうど人が多い時間帯だった。
水野日幸は分かっていた。彼が一緒についてきたのは、きっと何か目的があるはずだ。彼は何かを探ろうとしているようだった。それなら付き合ってやろうと思った。
出雲絹代は娘が次々と買い物をしていくのを見ていた。両側の軽食店の商品を全部買いたいかのように、そして買ったものを全部藤田清義に持たせていた。
藤田清義も遠慮することなく、性格が良く、渡されたものは何でも持っていた。しかし、どこに行っても威圧的な雰囲気を放ち、天神様のような男性が両手にビニール袋をいっぱい持っているのは、どこか違和感があった。
この辺りの軽食店の店主たちは、出雲絹代のことをよく知っていた。長く住んでいて、よく買い物をする常連客だった。
「これがお婿さん?」花屋の女主人は四十歳くらいで、お金を受け取りながら、小声で彼女に尋ねた。
男性は背が高くハンサムで、一目で良家の出身とわかった。両手にはビニール袋がいっぱいで、様々な食べ物が入っており、さらに少女から花束も渡されていた。
彼はそこに立っているだけで、目が離せないほどだった。本当に美しく、まるで絵から抜け出してきたようだった。
出雲絹代はお釣りを受け取りながら、優しく答えた。「違います。」
藤田家のような家柄に、どうして彼らが望むことができようか。それに娘はまだ小さく、恋愛する年齢でもなかった。
しかし、彼女も感じていた。娘はこの藤田さんに対して他の人とは違う態度を取っていて、まるで何か意見があるかのように、わざと困らせているようだった。
花屋の女主人は笑って、分かったような表情で言った。「こんなにハンサムで性格の良い男性はなかなかいませんよ。彼はとても良い人だと思います。あなたの娘さんとは才子佳人の組み合わせですね。」