第328章 彼は……彼女を一度信じられるのか

水野日幸はほっと胸を撫で下ろした。師匠が承諾してくれたからには、きっと大丈夫なはずだ。ちょうど戻ろうとした時、声をかけられた。

「水野お嬢様」藤原敦が急ぎ足で近づいてきて、彼女の前で恭しく立ち止まった。

彼はちょうど空港に向かうところで、この辺りを通りかかった時、ボスの家の若いお嬢様が警察署の前に立っているのを目にした。声をかけずにはいられなかった。

「まだ行かないの?」水野日幸は礼儀正しく彼を見た。

「これから出発です」藤原敦は丁重に立ったまま、警察署から聞こえてくる騒がしい声に耳を傾けながら言った。「何か問題でも?」

水野日幸:「何の問題もありません。すぐに解決しますから、あなたのボスには言わないでください」

藤原敦はようやく安心して言った:「ご安心ください」

ボスに言わないなんて、そんなことはありえない。もし彼らが何かを隠していることを知ったら、ボスは激怒するだろう。彼はまだ生きていたいのだ!

水野日幸は彼と数言葉を交わしてから、彼を追い払った。

向かいのマイバッハの運転席で、男が振り返り、妖艶な美貌を見せながら笑って言った:「ボスの奥様候補、本当に若いですね!」

藤原敦は警告するように彼を睨みつけた:「何を言うか。村上武、その口を慎め」

村上武は気にせず笑いながら尋ねた:「何があったんですか?なぜお嬢様が警察署に?」

藤原敦は座りながら、冷たい笑みを浮かべて言った:「出発だ。夏目家へ」

夏目家の息子が、ボスの奥様候補の友人を告発したというわけだ。夏目家に行って、何をすべきで何をすべきでないか、教えてやる必要がある。

30分後。

A市第一人民病院のVIP病室で。

夏目海は青ざめた顔で息子を叱りつけた:「今後外で事を起こしたら、どうなるか分かっているな!」

ほら見ろ!

何をしでかしたか見てみろ!

「父さん、どうしたんですか?父さんこそ、夏目家の者は誰にでも馬鹿にされる存在じゃないって言ったじゃないですか。あいつが先に仕掛けてきたんです。僕の足は骨折してるんですよ」夏目之沢は不服そうに父親を見つめ、目を赤くした。

たった1時間もたたないうちに、父の態度が180度変わってしまった。何かあったのだろうか?