第329章 泣きたくなるほど切ない

長谷川深は振り返り、唇を曲げて笑った。「間違いないよ」

城戸修も笑って、長い脚で彼らの方へ歩いていった。「待ってよ」

じゃあ、彼女を信じてみようか。

水野楓は助手席に座っている城戸修を見て、眉をひそめ、彼のやったことを思い出して、まだ気に入らない様子で言った。「本当にこのまま私たちと行くの?」

城戸修は頷き、水野日幸を一瞥した。「彼女が僕の全てに責任を持つと言ったから」

水野楓は鼻で笑い、かなり嫌そうな様子で言った。「家に帰って荷物を取りに行かないの?」

城戸修:「彼女が買ってくれるって」

水野楓の眉間の皺がさらに深くなった。「家族に一言言っていかないの?」

お兄さん、これは帝京に行くんだよ。郊外で遊んですぐ帰ってくるわけじゃないんだから、家に一言言って、何か持っていくべきじゃない?

城戸修:「僕には家族がいない」

水野楓:……

くそ、お前の勝ちだ。

城戸修は一人で、壊れたギターを持って、水野日幸と水野楓と一緒に水野家に戻った。

夏目海は夏目之沢を連れて、警察署から入手した住所を持って、お土産を買って城戸家を訪ねて謝罪に来た。

城戸修は市立第一中学校の近くの古いアパートに住んでいたが、ドアは施錠されていて、人はまだ帰っていなかった。二時間待っても帰ってこなかったので、一旦帰って、明日また来ることにした。

翌日の早朝。

水野日幸一家と連れてきた城戸修は、帝京に戻った。

水野楓は車で彼らを空港まで送った。

水野春歌は両親と一緒に、家の用事を済ませてから帝京に行く予定で、彼らより少し遅れることになっていた。

水野日幸たちが空港に着いたばかりの時、水野春歌から電話がかかってきた。大豆田秋白の指輪が見つかったそうで、永井綾芽が道端で見つけて、今から持っていくには間に合わないから、宅配便で送れるかと聞いてきた。

水野日幸は大豆田秋白に電話して確認すると、秋白は紛失を心配して、手渡しで持って帰ってきてほしいと頼み、指輪を受け取ったら食事に招待すると言った。

旧正月五日、仕事始めの人は仕事に、新学期の人は学校に、帝京もいつもの賑わいを取り戻し、至る所に人があふれていた。

城戸修は帝京に着いてから、水野日幸の手配で、源那津に会い、契約を結び、会社が用意した寮に入居した。全てが順調に進んだ。