飴は長谷川深を見ると、まったく相手にせず、ぷりぷりとしたお尻を振りながら、小さな足で長谷川深の方へ走っていった。
長谷川深は思わず吹き出し、目の前の愛らしい光景に、目元も眉も喜びに満ちていた。わざと「飴ちゃん」と呼んだ。
一週間ぶりに会った小さな子は、随分と大きくなり、太ってもいた。ぷっくりとして、走る姿はまるでふわふわのボールのよう。とても可愛らしかった。
長谷川深は小さな子が自分より速く、すでに壁の根元に着いているのを見て、下で焦って回り、少女を見上げてニャーンと鳴き、抱っこをねだった。
長谷川深は肩をすくめ、小さな子を見ながら、その後ろの男性を指さして笑いながら言った。「彼に頼みなよ。僕にはどうしようもないから」
飴は焦って、ぐるぐると回りながら、壁の上の長谷川深を見たり、車椅子の長谷川深を見たりしていた。
しかし二人とも見物人のように見ているだけで、助けようとしない。小さな子は焦って、誰も頼れず、自分で何とかするしかなく、小さな前足で壁を登ろうとした。
でも、まだ小さすぎて、キャットタワーさえ上手く遊べないのに、こんな高い壁を登れるはずもなく、小さな前足で2尺も登らないうちに、仰向けに大きく転んでしまった。
長谷川深は無慈悲に笑い、指を曲げて「自分で登ってきなさい」と言った。
飴は諦めず、額の干し草を払い落としてから、また息を切らしながら登り始めた。意地になっていた。
長谷川深は少し心配になり、少女を見て「もう意地悪するのはやめよう。君に会いたがっているんだ」と言った。
彼も彼女に会いたかった。
「私なんか想ってないわよ。人は『衣帯漸く寛うして終に悔いず、伊が為に消えて人憔悴す』というけど、見てよ、まん丸になっちゃって」と長谷川深は笑いながらぶつぶつ言った。
そう言いながら、横から彼女専用の小さなかごを持ち上げ、飴の横に置いた。小さな子が四本の短い足で這い上がってかごの中に入り、おとなしく座る様子は、スクールバスに乗る幼稚園児のように可愛らしかった。
「お昼にご両親が帰ってきた時、焦っていたんです」と長谷川深は笑って言った。「お父さんの声を聞いて、私にずっとぐずっていました。これからはもっと可愛がらないと、私に懐かなくなってしまいそうです」