曽我若菜の顔は、一瞬にして絵の具を散らしたパレットのように、見るも無残な表情となり、ペンを握る手が思わず強くなった。
母が学校に来たの?どうして知らなかったの?
自分に内緒で学校に来たのは、きっとあの水野日幸という小娘に会いに来たに違いない!
田中澪子たちの女友達は、お互いに顔を見合わせ、何が起きているのか分からなかった。
入り口にいた男子生徒も詳しい事情は知らず、ただ学校中に噂が広まっていることだけは知っていた。名優の川村が二百万円を出して、全校生徒にミルクティーを奢り、さらにばったり会った女子生徒一人に化粧品セットをプレゼントしたという。
「若菜、川村叔母さんって本当に優しいわね。あなたと班長は幸せ者ね。あなたたちのおかげで、私たちも女優さんのおごりのミルクティーが飲めるなんて。」