第361章 城戸修の歌

「城戸修の『君だけが好き』よ」石田文乃も誇らしげな笑みを浮かべながら、特に強調して言った。「彼が作詞作曲した曲で、メインの曲じゃないんだけど。もし気に入ったら『ミュージックブラインド』をダウンロードしてみて。そこに独占配信のデジタルアルバムがあるわ」

「文乃、行くわよ」水野日幸は石田文乃の手を引いて歩き出した。このまま放っておけば、また延々と人に推薦し続けるに違いない。出口で女性DJの方を振り返り、誠実に謝罪した。「申し訳ありません、お邪魔しました」

女性DJはまだ曲の余韻に浸っていて完全に我に返っていなかった。顔を上げた時、彼女の美しさに一瞬目を奪われ、慌てて首を振って恥ずかしそうに笑った。「い...いえ、大丈夫です」

我に返った時には、水野日幸の凛とした横顔が一瞬だけ目の前を通り過ぎ、孤高な影だけが残された。女性である自分でさえ、思わず心臓の鼓動が速くなった。