第339章 牢屋には入らない

出雲絹代は彼女を見つめて言った。「賭け事でもしたの?」

本当に出世したものね。数千万円もの大金を、小銭扱いするなんて。

水野日幸は全く動じることなく頷いた。「ママ、私たちにとって一千万円は大金だけど、お金持ちにとっては、私たちが二千円使うようなものなの」

水野春智も同調して「お前、金持ちにとって一千万なんて大したことないんだよ。世界一の金持ちなんて、一秒で一千万円稼ぐんだぞ。そんな人たちにとって、一千万なんて端金にもならないだろう?」

出雲絹代は息の合った父娘を見つめながら、別の質問をした。「本当に刑務所に入らないの?」

娘が賭博をしたと聞いた時は、死ぬほど驚いた。曽我家の息子が、警察に通報すれば賭博に参加した全員が刑務所に入ると言っていた。

日幸は女の子なのに、もし捕まって刑務所に入ったらどうしよう?

水野日幸は真剣に説明した。「大丈夫、絶対に大丈夫。刑務所に入るとしたら曽我家の人が先よ。私は五十万円しか出してないし、文乃たちに聞いてみて。お金はパパと会社に全部渡したわ」

出雲絹代は娘が刑務所に入らないと聞いて、やっと安心して涙を拭った。「ママに約束して。もう二度とこんなことしないって」

水野日幸は素直に首を振り、母の前にしゃがんで腕を差し出した。「ごめんなさい。絶対にもうしません。もし私がまた賭け事をしたら、この手を切り落としてください!」

出雲絹代「もし二度と賭け事をするなら、ママの命を持っていきなさい!」

水野日幸はにやにやと笑って「ママ、曽我時助のために頼んでくれるの?」

出雲絹代は冷笑した。「何を頼むことがあるの?彼だって子供じゃないでしょう。人は自分のした事の責任を取らなければならない。賠償すべき金額は全額支払うべきよ」

賭博をする人間は、いくら負けても、たとえ破産して家族が離散しても、自業自得。賭けに手を出した自分が悪いのだから。

こんな若くして賭場を設けるような人間は、ろくな人間じゃない。賠償させて、教訓を与えるべきだわ。

「そんな深刻な顔をされて、びっくりしたわ。ママが心を痛めて、私に助けを求めるのかと思った」水野日幸は母の腕にしがみついて甘えた。「ママ、これからは曽我家の人の言うことは一切聞かないで。あの家族は全員ろくでもないわ」

本当に驚いた。

両親が曽我時助のために頼みに来たのかと思ったのに!