第358話 顔面にパチパチと響く平手打ち

長谷川深は目の前の赤い下着を見つめ、目元と眉に優しさを浮かべながら、葛生に声をかけた。「更衣室まで押してくれ」

葛生はもう慣れっこになっていた。水野お嬢様からの贈り物なら、何であれbossは喜ぶのだ。たとえ蛇革のバッグを送られても、bossはそれを身につけて、素敵だと言うだろう。

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曽我言助は3月18日に新曲をリリースする。先輩後輩のアーティストたちは、誰一人としてこの月に新曲を出す勇気がなかった。彼と時期が重なれば、完全に圧倒されて、売上も話題性も惨めなことになるからだ。

しかし、例外が一つあった。コスモスグループの新人歌手、城戸修も同じ日に新曲をリリースすることになった。宣伝はそれほど大々的ではなく、同じ事務所のアーティストたちが宣伝を手伝う程度だった。

だが、彼の所属事務所の先輩たちは並の存在ではなかった。その半数は『笑江山』に出演後、一気にブレイクした芸能界の若手スターたちだった。