第363章 絶対に負けられない

「言助、何をするつもりだ?夕子なんて人はいないよ、勘違いしているんじゃないか!」マネージャーの中村超は慌てて追いかけ、彼を引っ張りながら、立山部長に目配せを送り続けた。

コスモスエンタテインメントのあの若手歌手、城戸修という奴のアルバムの売り上げが急上昇していて、SNS上ではすでにベテランのミュージシャンたちが彼の音楽を聴いて、大きな賞賛と評価を与えていた。

言助の音楽の道での師であり、友でもある歌王の高橋朗が、つい先ほどその新人の城戸修の曲を推薦し、長文のコメントを投稿して、日本音楽界の復興に期待が持てると述べた。

特に城戸修のアルバムの三つのメインソングについて、高橋先生は非常に高い評価を与え、天才作詞作曲家だと絶賛し、彼女が城戸修のために書いた三つのメインソングは、すでに日本歌謡界の最高水準を遥かに超え、世界進出も問題ないと言った。

言助は人生の師とも言える人がそこまで言うのを見て、黙っているわけにはいかず、すぐに城戸修のアルバムを取り寄せて、彼の曲を聴いた。

彼は言助のマネージャーとして、音楽専攻出身の人間として、音楽に精通しているとは言えないまでも、鑑賞する目は持っていた。

あの三つのメインソングは、確かにクオリティが高く、どの一曲を取っても街中で大ヒットするレベルで、まして三曲が同じアルバムに収録されているのだから。

一曲でアルバム全体を引っ張れるのに、一枚のアルバムにまとめて使うなんて、効果が強すぎる。

高橋先生の作詞作曲家への評価は、歌手の城戸修への評価よりも一段階高く、そしてその作詞作曲家の名前は夕子という。

三つのメインソングのうち、第一メインソングは『青糸』という。

あの日、言助を訪ねてきて追い返された醜い黒くて痩せた少年が、自分は夕子だと名乗り、渡した曲の中に『青糸』という曲があったことを、彼ははっきりと覚えていた。

この件は絶対に腹の中にしまっておかなければならない、言助に知られたら、マネージャーとしてクビになるのは間違いない。

「夕子って誰?知らないけど」立山部長は怒り心頭だった。2年かけて準備した新アルバムは、今の音楽界で最高水準の品質だと思っていたのに、まさか途中で出し抜かれるとは。