彼が見た彼女は、笑っている時も、笑っていない時も、彼を見つめる時も、その瞳の奥には警戒心と冷たい距離感が宿り、自ら彼との距離を保っていた。
彼女は彼に対して、まるで小さなハリネズミのように、全身にトゲを立て、全身全霊で彼への嫌悪と敵意を表していた。
水野日幸は小さく呻いた。
藤田清義は慌てて視線を外し、瞳の中の優しさが消え、氷のような冷たさに覆われ、無情な冷たさを取り戻しながら、周囲を見渡した。
ここは病院だった。
大部屋。
環境は汚く、乱雑。
空気は耐え難い。
こんな病室に入るのは初めてで、潔癖症の彼にはこの環境も、自分が横たわるベッドも耐え難かった。水野日幸を起こさないように、反対側から布団をめくり、ベッドを降りた。
まだ夜が明けていなかった。
隣のベッドの患者がトイレに行くために起き上がり、何かを探しているような彼を見て、向かいの棚を指差しながら小声で言った。「あなたは18番ベッドですよ。あなたの荷物は18番の棚にあります。」