彼が見た彼女は、笑っている時も、笑っていない時も、彼を見つめる時も、その瞳の奥には警戒心と冷たい距離感が宿り、自ら彼との距離を保っていた。
彼女は彼に対して、まるで小さなハリネズミのように、全身にトゲを立て、全身全霊で彼への嫌悪と敵意を表していた。
水野日幸は小さく呻いた。
藤田清義は慌てて視線を外し、瞳の中の優しさが消え、氷のような冷たさに覆われ、無情な冷たさを取り戻しながら、周囲を見渡した。
ここは病院だった。
大部屋。
環境は汚く、乱雑。
空気は耐え難い。
こんな病室に入るのは初めてで、潔癖症の彼にはこの環境も、自分が横たわるベッドも耐え難かった。水野日幸を起こさないように、反対側から布団をめくり、ベッドを降りた。
まだ夜が明けていなかった。
隣のベッドの患者がトイレに行くために起き上がり、何かを探しているような彼を見て、向かいの棚を指差しながら小声で言った。「あなたは18番ベッドですよ。あなたの荷物は18番の棚にあります。」
藤田清義は軽く頷いた。「ありがとう。」
患者は彼の顔もよく見えないまま、ぼんやりとトイレへ向かった。
藤田清義はナースステーションに行き、電話を借りて一本かけ、そのまま帰ろうとしたが、頭に浮かんだ少女の穏やかな顔に、眉間を揉みながら、病室に戻った。
少女はまだ眠っていた。彼はベッドの布団を見つめ、彼女をベッドで寝かせたまま布団を掛けるべきか考えていた。
結局、意識がはっきりしている状態でそれらに触れることも、彼女にそこで寝させることも我慢できず、上着を脱ぎ、少し身を屈めて彼女に掛けようとした。
しかし、少女が突然目を開けたため、彼は素早く上着を格好よく振り回して自分の身に着け、彼女を見て言った。「目が覚めたか。」
水野日幸は眉をしかめ、半分眠っていた状態から、藤田清義の顔を見た途端に完全に目が覚めた。「なぜ起きているの?」
藤田清義の整った顔には感情の動きは全くなく、声も相変わらず冷たかった。「もう行かなければならない。」
水野日幸は彼の言葉を聞いて、一発殴って目を覚まさせてやりたいと思った。胃穿孔の患者が、どこに行くというのか。でも、彼が行こうが彼女には関係ないことだった。無関心に「うん」と返事をした。
行けばいい!
出て行け!
痛みで死ねばよかったのに!