おじさんは仕方なく首を振った。「何ができるって、彼女にお礼を言いたいだけだよ。これから姪と孫に会いに行くところなんだ。一緒に食事でもどうかな」
彼がそんなに悪意のある人に見えるだろうか?
結局のところ、彼の若々しい容貌のせいなのだ。
「私たちは遠慮します。同窓会の約束があるので!」石田文乃は彼の目をよく観察したが、異常なところは見当たらず、純粋に年長者が若者を気にかける優しさと愛情だけが感じられた。
このおじさん、若すぎる。七十歳なのに、五十歳くらいにしか見えない。うらやましい限りだ。
「じゃあ連絡先だけでも教えてくれないか。今度ご飯でも」おじさんは少し残念そうに、水野日幸の方をちらりと見た。
この娘は性格が冷たすぎるが、なぜか親近感を覚える。
車はすぐに六和園の前に停まった。帝都で長年の名声を誇る、数百年の歴史を持つ日本の老舗料理店だ。
水野日幸は目を閉じ、キャップで顔を隠し、イヤホンを耳に差していた。
おじさんは石田文乃と相談し、姪と孫を連れて水野日幸にお礼を言いに来たいと、少し時間を待ってほしいと頼んだ。
石田文乃は人の頼みを断れない性格で、大して苦労せずに同意した。日幸が人を助けたのだから、相手が子や孫を連れてお礼を言いに来るのは当然のことだと思った。
おじさんはすぐに戻ってきて、藤田清義を引っ張り、後ろには藤田君秋が続いていた。
石田文乃は来た人を見て目を丸くし、必死に水野日幸を引っ張りながら、声を震わせて言った。「日幸、日幸、見て!」
なんてこと!
このおじさん、ただ者じゃない!
姪?
孫?
あの美人お姉さんが姪で。
そして彼が言っていた孫というのは、藤田清義だったんだ!
藤田清義は水野日幸を見たとき、複雑な思いに駆られた。まさか彼女とこんなに縁があるとは思わなかった。また会えるなんて。大叔父が言っていた命の恩人が彼女だったことは、考えるまでもなく分かった。
藤田君秋は逆に喜んで、藤田清義に目配せをし、彼をつねりながら、また会えたじゃない、これほどの縁があるのに、まだ認めないの?という意味を込めた。
水野日幸は眠っている時、助けた変なおじさんが自分をじっと見ていることに気付いた。悪意はなかったものの、探るような視線が気になり、不快だったので帽子で顔を隠した。