第379章 一歩遅かった

走り過ぎていったのは4号車で、彼らははっきりと見ていた。まるでドライバーは功名を隠し、袖を振って、後世に伝説だけを残そうとしているかのようだった。

石田文乃も呆然としながら、苛立たしげに林格史を見つめた。「これはどういうことだ?」

林格史は首を振り、慌てていた。彼にも何が起きているのか分からなかった。今通り過ぎたのは日幸姉と緒羽様の車のはずだ。ゴール前で止まるはずだったのに。間違いなく今回のレースの優勝者になるはずだったのに。

石田文乃も不吉な予感を感じ、群衆が再び熱狂的な歓声と叫び声を上げる中、赤いスポーツカーが突っ込んでくるのを目にした。

赤いスポーツカーも青いスポーツカーと同様に、ゴールラインを突っ切ったまま減速せず、停止もせず、そのまま消えていった。

「くそっ!」石田文乃は低い呪いの言葉を吐き、目に心配の色を浮かべながら、ガードレールを掴んでコースに飛び降りた。「何かあった。」