第379章 一歩遅かった

走り過ぎていったのは4号車で、彼らははっきりと見ていた。まるでドライバーは功名を隠し、袖を振って、後世に伝説だけを残そうとしているかのようだった。

石田文乃も呆然としながら、苛立たしげに林格史を見つめた。「これはどういうことだ?」

林格史は首を振り、慌てていた。彼にも何が起きているのか分からなかった。今通り過ぎたのは日幸姉と緒羽様の車のはずだ。ゴール前で止まるはずだったのに。間違いなく今回のレースの優勝者になるはずだったのに。

石田文乃も不吉な予感を感じ、群衆が再び熱狂的な歓声と叫び声を上げる中、赤いスポーツカーが突っ込んでくるのを目にした。

赤いスポーツカーも青いスポーツカーと同様に、ゴールラインを突っ切ったまま減速せず、停止もせず、そのまま消えていった。

「くそっ!」石田文乃は低い呪いの言葉を吐き、目に心配の色を浮かべながら、ガードレールを掴んでコースに飛び降りた。「何かあった。」

あの赤いスポーツカーは、藤田家の長男、藤田清義のものだった。

藤田清義はその時とても恐ろしい様子で、他人の車を奪って飛び出していった。

彼女はその時何が起きているのか分からなかったが、今なら分かる。きっと藤田清義は日幸たちに何か起きることを知っていて、追いかけたのだ。

彼が彼らに何かが起きることを事前に知っていたということは、車に誰かが細工をしたということだ。

高木美以!

死にたいのか!

彼女がバイクを奪って追いかけようとした時、まだエンジンをかける前に、隣で再びエンジンの轟音が響いた。

白いスポーツカーが稲妻のように彼女の横を通り過ぎ、ゴールラインを越えて、瞬く間に視界から消えていった。

くそっ!

藤田清明!

白いスーパーカーの中にいたのは、藤田清明だった!

石田文乃は考える間もなく、すぐにバイクを発進させ、速度を最大まで上げて追いかけた。心の中で何も起きませんようにと祈りながら。

レースファンたちはもちろん、審判も困惑していた。優勝、準優勝、3位の車が通り過ぎていったのに、言葉を発する間もなく、全てが消えてしまった。

しかし、追跡用ドローンから送られてきた映像で、青いスポーツカーが左側の山肌に接触しているのがはっきりと見えた。

スピードが速すぎて、接触した瞬間、空中に火花が散り、彼は恐怖で目を見開いた。