少年は咳き込んで、動いた。
彼に抱かれていた水野日幸も、息苦しそうに咳き込んだ。
「ゴホゴホ」水野日幸は激しく咳き込み、辻緒羽を押しながら文句を言った。「緒羽様、これからジムに行くのはやめてください。胸板が鉄みたいで、頭がパンクしそうでした」
「ああ」辻緒羽は軽く返事をし、なんとか体を起こして、彼女が新鮮な空気を吸えるようにした。
「緒羽様、私のあの質問、答えが出ました」水野日幸の声は、冷静さの中に喜びの笑みが混じっていた。
彼はそうするだろう。
あの事故の時、もし彼が助手席に座っていて、清水年彦が運転席にいたら、彼は躊躇なく飛び出して守っただろう。
今回と同じように、彼女が岩に衝突する寸前、考える間もなく飛び出して、彼女を守った。
辻緒羽は低く笑った。「お嬢さん、どんな頭してるんだ。こんな時にそんなこと考えてるなんて。生き延びたお祝いでもしようよ」