第395章 命の残り時間

水野日幸のような人物が、長谷川家当主と知り合いで、その車に乗れるなんて、太陽が西から昇るようなものだ。

目の前のマイバッハに乗れるだけでも、彼女には過分な待遇だ。

曽我若菜は水野日幸が車に乗り込むのを見て、安堵のため息をついた。これで確実に、長谷川家当主ではないことが分かった。

帝都の上流社会では長谷川家当主について噂があり、何事においても最高級で最も高価なものしか使わないという。数千万円の車では、その身分に見合わないのだ。

水野日幸というあの賤しい女め、朝からあいまいな言い方をして、一日中疑わせやがって。長谷川家当主がそんな軽薄な女に目をかけるはずがない!

人が多く、往来が激しくて観察の邪魔になった。車内は暗く、誰が乗っているのか、どんな顔をしているのかも見えなかった。