第384章 大きなネズミがいる

長谷川深は車椅子を押して近づき、彼女の孤独で寂しげな、小さく丸まった姿を見つめ、流れ落ちる涙を見ながら、胸が締め付けられるような痛みを感じ、息もできないほどだった。

少女は唇を噛みながら、静かに彼を見つめていた。澄んだ瞳は泉のように輝き、涙が絶え間なく流れ落ち、その中には不満と非難と恐れが込められていた。

彼は彼女をどう慰めればいいのか分からなかった。また、命を危険にさらすような行為を二度としないよう、どう諭せばいいのかも分からなかった。

彼女は知らなかった。レース場で彼女が危険な目に遭いそうになった時、彼がどれほど心を痛め、恐れ、絶望したかを。

しかし、彼女が無事な姿で目の前に現れた瞬間、胸に溜まっていた感情は全て消え去り、ただ心配だけが残った。少し慌てながら彼女の前に寄り、手を伸ばして涙を拭った。

水野日幸は声を立てずに泣き続け、彼の冷たい指が肌に触れるのを感じると、声が詰まり、突然彼に抱きついて、さらに大きな声で泣き始めた。

長谷川深の体は一瞬硬くなった。少女の温かい体が小刻みに震え、彼女はとても小さく、心を痛めるほど泣いていた。抑えた泣き声は刃物のように彼の心を一刺しずつ切り刻んでいった。大きな手が思わず彼女を優しく抱きしめた。

彼の愚かな少女よ!

ようやく恐れを知ったのだな。

水野日幸の抑えられていた感情は、ついに発散口を見つけ、泣けば泣くほど辛くなり、声は大きくなっていった。何も考えずに声を上げて泣き、心の中の全ての恐れと不安を一気に吐き出した。

彼の前では、何も考えたくなかった。ただ一度だけ、完全に感情を解放したかった。

彼女は恐れていた。

どうして恐れないことがあろうか?

もう少しで彼に二度と会えなくなるところだった。

長谷川深は眉を寄せ、目に薄い霧が広がっていった。心痛めながら彼女を抱きしめ、腕に力を込め、慰めるように彼女の背中を優しく叩いた。

彼はずっと、彼女は何も恐れないと思っていた。しかし彼女にも恐れはあったのだ。何を恐れているのだろう?彼に二度と会えなくなることを恐れているのだろうか?

少女の声は次第にかすれていった。

彼は心痛めながら優しく諭した。「もう泣かないでいい?」