第404章 迎えが来ている

藤田清義!

前世で何か悪いことでもしたのか、どこに行っても彼に会ってしまうなんて。

藤田清義は彼女を見た瞬間、一瞬固まった。ここで彼女に会うとは思ってもみなかった。目には冷たい色が宿り、その眼差しは鋭い刃物のように彼女を一瞥した。

水野日幸も負けじと彼を見返し、同じように冷たい視線を送り返した。

藤田母は二人の視線の応酬を感じ取り、空気が一瞬で冷え込んだように感じた。しかし、再び見た時には、二人とも普通の様子に戻っていた。

「母さん」藤田清義は声をかけたが、水野日幸には一瞥もくれず、まるで空気のように無視した。

水野日幸も彼を無視することにした。ただ、藤田奥様に挨拶をしてから行くべきか少し迷ったが、最終的に何も言わずに立ち去ることにした。その態度は極めて高慢で冷淡だった。

藤田清義は彼女のその態度に血を吐きそうなほど腹が立った。よくもまあ、本当によくもまあ。彼が彼女に言ったことを、まるで聞き流したようだ。

よくもここに来る勇気があったものだ!しかも母に会わせてしまうなんて、誰が彼女にそんな勇気を与えたのか!

「水野...お嬢様」藤田母は彼女の名前を呼ぼうとしたが、名前を知らなかったため、最後は丁寧な呼び方で呼んだ。

水野日幸は足を止め、振り返って彼女を見つめ、軽く頷いて礼儀正しく言った。「藤田奥様」

藤田清義はわかっていた。この娘は良からぬことを企んでいる。次男と三男を手中に収めた後、今度は母に近づこうとしているのだ!

「礼史、水野お嬢様を送っていきましょう」藤田母は藤田清義を見て、息子の態度があまりにも悪く、まるで敵に対するかのようだったので、不快そうに彼を睨みつけ、態度を改めるよう促した。

「結構です。ありがとうございます」水野日幸はそう言うと、すぐに歩き出した。

藤田母はすぐに追いかけ、声には心配が満ちていた。「女の子一人では、こんな遅くは危ないわ。どこにお住まいなの?送っていきましょう」

水野日幸は彼女の好意を理解し、向かい側に停まっている黒い車を指さした。「一人じゃありません。迎えが来ています」

藤田母はようやく向かい側に停まっている車に気づいたが、まだ心配そうだった。「お友達?それともタクシー?」

水野日幸は考えることもなく、声も柔らかくなって答えた。「お兄様です」