第414章 お前はバカなのか

浅井製薬の中核実験室にて。

水野日幸はまだ忙しく作業を続けていた。広大な実験室の中で、彼女一人だけがいた。

辻緒羽は清水年彦のために奔走していたが、当然おろそかにはできず、実験室に入って水野日幸の邪魔をするのを恐れ、ずっと実験室の外で座っていた。

そうして一日中座り続け、外の空が暗くなってきたのを見て、タバコを取り出そうとしたが、空っぽだった。

隣の灰皿には吸い殻が小山のように積み重なり、椅子の上には空の煙草の箱が何個もあった。それを見て自分でも少し呆然とし、立ち上がって片付けてからガムを噛んだ。

戻ってきた時、実験室のドアの前に立ち、中で忙しく動く人影を見つめ、目には感謝の念が溢れていた。

自分はずっと運が悪かったと思っていたが、まさかこんな良いことに巡り会えるとは。彼女に出会えたことは、この人生で最も幸運なことだった。

携帯が振動し、取り出して見ると藤田清明からだった。彼以上に心配して焦っている様子で状況を尋ねてきた。「まだ実験室にいるよ!」

藤田清明は激怒した。「休ませてから続けさせろよ。どれだけ時間が経ったと思ってる?朝の4時から今は夜の6時だぞ。彼女を過労死させる気か?」

辻緒羽もその問題は分かっていた。14時間もの間、集中して作業を続けていたが、彼女の表情には少しの疲れも見えず、動作は相変わらず素早く正確だった。「実験室には入れないんだ。」

ほら見ろ!

彼は藤田清明とは違うのだ。藤田清明は彼女の状態、体調、持続できるかどうかを気にかけ、疲れることを心配している。

では彼は?

彼は卑劣にも年彦兄のことばかり心配し、彼女が薬を作り出せるかどうかということを最優先に考え、彼女の状態を第一に考えていなかった。

藤田清明は焦った。「お前バカか?教えないといけないのか。ドアをノックして、外に出てくるように言えよ。」

辻緒羽は苦笑いしながら皮肉った。「すごいじゃないか。お前が来て呼んでみろよ!」

彼女はとても集中していて、目には情熱が衰えることなく、彼から見ても、今の仕事を心から愛していることが分かった。

彼は彼女の目にこんな表情を見るのは稀だった。石田文乃が飴パパの話をする時と同じように、目が輝いていた。

あの時彼は思った。人は好きな人のことを話す時、本当に輝くんだなと。

しかし、人は好きなことをしている時も、輝くのだ。