車のドアが開いた瞬間、彼は車の中に座っている男性を目にした。その男性も彼に気付き、鷹のように鋭く、深い淵のように冷たい瞳が一瞬彼を捉え、その威圧感に一瞬息苦しくなった。
車内は灯りが付いておらず、暗かった。男性は完全に影の中にいて、まるで闇と一体化しているかのようだった。
彼は男性の顔ははっきりと見えなかったが、心の中では確信していた。飴パパだ、日幸姉が好きな男性に違いない!
水野日幸が車に乗り込む時、振り返って辻緒羽に手を振り、車の中に入って、ドアを閉めた。
車内の灯りが付いたが、窓はワンウェイミラーになっていて、やはり男性の顔は見えなかった。辻緒羽は車が去っていくのを見送ってから、自分の車に乗り込んだが、心の中には少し残念な気持ちが残った。
石田文乃も言っていた、飴パパはとても美しいと。彼も一度見てみたかった、一体どれほど美しいのか、彼女がそこまで言うほどなのか。彼女は大好きなアイドルにすらこれほど多くの言葉を費やして形容したことはなかったのに。