第416章 お墓参りに行くの?

水野日幸は足を止めることなく、何の反応も示さず、会社の入り口に向かって普通の速度で歩き続けた。異常を気づかれてはいけない。

「水野日幸!」藤田君秋は彼女が無視するのを見て、声を大きくし、直接追いかけていった。

水野日幸は額に黒い線が浮かび、こんな格好をしているのに、どうやって分かったのだろう。無視しているのに、なぜ何度も呼びかけ、追いかけてくるのだろう。

藤田君秋も不思議に思った。たった一度しか会ったことがないのに、顔も見えないのにどうして分かったのだろう。きっと彼女の持つ雰囲気が特別なのだろう。追いついて彼女を引き止め、少し不満げに言った。「どうして無視するの?」

水野日幸は諦めたように溜息をついた。もうこうなってしまった以上、否定して逃げても無駄だ。礼儀正しく距離を置いて彼女を見た。「藤田お嬢様、こんにちは」