「聞いたよ。写真を撮りたいの?それともサインが欲しいの?」城戸修は彼女の手からデイジーを受け取り、レコーディングスタジオの窓辺にある枯れたデイジーを取り除き、新しい花を置いて、振り返って彼女に礼儀正しく微笑んだ。「お花をありがとう」
水野日幸も驚いた。彼女はレコーディングスタジオに何度も来ていたし、城戸修のアルバム録音期間中は、彼と同様にほとんど会社で寝泊まりしていたのに、彼がデイジーを飾っているのに気付かなかった!
彼の趣味は、本当に特別だった。
藤田君秋は水野日幸を見て、少し自慢げで得意そうな表情を浮かべた。まるで「ほら見て、デイジーが好きなのよ」と言いたげだった。
「私、用事があるから、二人で話してて」水野日幸は少し呆れたが、他人の趣味なので尊重した。藤田君秋を見て「何が欲しいか、直接彼に言えばいいわ」と言った。
そして城戸修に一言頼んで、立ち去った。
藤田君秋は彼女が去るのを見届けてから、自然に城戸修に尋ねた。「彼女は御社のどういう立場の人なの?」
城戸修は水野日幸から事前に電話を受けており、彼女は既に自分の立場を決めていた。「所属アーティストです」
正確な回答を得た藤田君秋は、もう考え始めていた。アーティストなら、きっと芸能界に入るつもりなのだろう。
日本の芸能界はやはりハリウッドには及ばない。多くの日本のスターたちは必死に国際進出を目指している。彼女を藤田家のエンターテインメント会社に所属させることができないだろうか。
そうすれば自分も経営者として、いつでも会いたい時に会えるようになる。考えれば考えるほど、この考えは素晴らしいものに思えた。
水野日幸が会社に来たのは、主に源那津と『国民アイドル』の収録について、そして彼女の役割について詳しく話し合うためだった。
源那津は彼女に尋ねた。「曽我若菜が番組に参加するのは彼女の権利だけど、なぜ曽我逸希に彼女のデビューのチャンスを与えることを承諾したの?」
「彼女が調子に乗りすぎているから、私はそれが見られないのよ。彼女は有名になりたがっているでしょう?だから高く持ち上げて、そして落とすの」水野日幸は笑って、彼の前では何を言っても率直だった。