第420章 二人の世界

彼は彼女が飴パパと一緒に行ったことを知っていたから、何度も電話をかけても通じなかったのをあきらめたのだ。そうでなければ、きっと彼女に何かあったと思い、とっくに世界中を探し回っていただろう。

「ああ」水野日幸はまた応えた。「あちらの状態は安定していますか?」

辻緒羽:「医者が先ほど診察に来ました。状態は非常に安定しています」

水野日幸は清水年彦の状態についてさらに数回尋ねてから、電話を切った。そして隣の方向をちらりと見て、突然罪悪感に襲われた。

出雲絹代と水野春智は家に帰り、水野日幸は自分が二人に分かれて、一人は長谷川深のそばに残り、もう一人は家に帰れたらと願った。

長谷川深は食事を作ったが、少女は本当に両親が恋しかったので、食事をせずに家で食べると言った。

水野日幸は彼に鍼灸マッサージをしてから、飴を抱いて帰った。家の玄関に着くと、そっと声を低くして「お兄さん、帰って食事してね!」

長谷川深は頭を下げ、はいと答えた。泥棒のように忍び足で家に入る少女を見て、思わず口元が緩んだ。

彼は車椅子を動かし、少女の足音に従って家に帰り、二軒の家の間にある壁を見つめた。

ただの壁なのに、見れば見るほど邪魔に感じ、この壁を取り壊してしまいたくなった。

水野家は明るく灯りが輝いていた。

「日幸が帰ってきたの?」水野春歌の声が聞こえ、足音のする方を見て、喜びに満ちた表情を浮かべた。

水野日幸も嬉しそうな顔をした。「お姉ちゃん、やっと来たんだね」

この二ヶ月の間、長いとは言えないが短いとも言えない、そんな短い時間で、城戸修はすでにブレイクしているのに、彼女の歌姫の姉はようやくやって来た。

「どうしてこんなに長くかかったの」出雲絹代も近づいてきて、娘を見て笑顔で迎えた。「家族全員があなた一人を待っていたのよ。早く手を洗って、食事にしましょう」

水野日幸は元気よく大きな声で返事をし、飴を置いて走り寄り、母を抱きしめた。「ママ、会いたかった」

「わかったわ、わかったわ。もう大きいのに、まだ子供みたいね」出雲絹代は愛情たっぷりに笑いながら娘を抱きしめ返した。「玄次があなたの電話が通じないって心配していたわ。電話を返しておきなさい」

水野日幸は藤田家のことを両親にどう説明すればいいのかわからず、曖昧にうんと答えただけで、電話を返すつもりはなかった。