「私の欲しい人を全部見つけたら。」水野日幸は笑って言った。「でも、私に歌の依頼をしてきた歌手のリストを渡してくれていいわ。」
自社の歌手だけに曲を書くのではなく、音楽界全体、芸能界全体に広げることで、曽我言助に求めても得られない絶望を身をもって体験させることができる。
「はい。」源那津は承諾した。
その後、城戸修が帰り、二人はしばらく話をしてから、水野日幸も帰ることにした。
ところが、彼女が下に着いたとたん、藤田君秋と鉢合わせた。明らかに彼女を待っていたようで、無駄話もせずに本題に入った。「お嬢さん、移籍を考えてみない?」
水野日幸は藤田家の人々がこの点において非常に優れていると感じた。いつも率直に話すので、彼女はそういう人が好きだった。答えもはっきりしていた。「興味ありません。」
彼女は社長なのだし、芸能人になるつもりも、公人になるつもりもない。
「そう言わないで、うちと契約すれば、必ずスターにしてあげるわ。藤田清輝を知ってるでしょう?彼は私がスターにした人よ。」藤田君秋は諦めずに彼女の後を追いかけた。
この娘は容姿も雰囲気も良い。ちゃんとプロデュースすれば、必ず成功するはずだ。
「日本初の国際的な女優になりたくないの?藤田清輝のように、世界中で大人気になれるのよ?」藤田君秋は誘い続けた。最も説得力のある例は、もちろん藤田清輝だった。
このレベルまで成功した最初の日本人で、世界中で大人気、街で適当に誰かを捕まえても彼を知っているほどだ。
「なりたくありません。」水野日幸は簡潔に答えた。「医科大学に進学して、医者になりたいんです。芸能界には入りません。」
公人になるのは面倒すぎる。どこに行っても、ファンがいて、自分を認識する人がいて、プライバシーもなく、個人的な空間もなく、パパラッチに追われ、世論に縛られる。彼女は異世界で一度国際的なスターを経験したが、もうたくさんだった。
「もったいないわね。」藤田君秋はため息をつき、かなり失望した様子だったが、すぐに思い直して追いかけた。「じゃあ、一つ聞きたいんだけど、作詞作曲家の夕子を知ってる?連絡先を持ってる?」
水野日幸は首を振った。「いいえ。」
藤田君秋はようやく彼女の手を離し、彼女の冷たく孤高な後ろ姿を見ながら言った。「中に案内してくれてありがとう。」