第438章 見死に救わず

結局このような人は、一歩一歩が計算づくで、一口の水を飲むのも陰謀を考えながら、常に誰にも見透かされない仮面を被っていて、誰にも本心を見せることはないのだ。

曽我時助が彼にどれほど酷い目に遭わされたかを見れば分かる。彼は心を持たない人間なのかもしれない。曽我時助が刺されたのは気分がいいが、彼のやり方には同意できない。

「母の病気は、もう先延ばしにはできないんです」大豆田秋白は彼女を見つめて言った。「もし可能でしたら、助けていただけませんか。あなたの正体は誰にも漏らしません」

水野日幸は内心慎重だった。やはり憎らしい狐め、自分はうまく隠していたはずなのに、どうやって見破ったのだろう？

「約束します」大豆田秋白の声は既に緊張し始め、体は強張っていた。彼女からの返事がないまま、唇の端に苦みが滲んだ。

彼は分かっていた。

彼女が自分をそれほど快く思っていないことを。

どうして助けてくれるだろうか？

彼女が清水年彦を治療した人物だと認めなければ、彼には何もできないのだ！

「時間があるときに、一緒に見に行きましょう」水野日幸は彼の心からの願いを明確に感じ取った。

そう。

この憎らしい狐は、仮面を脱ぎ捨て、最も弱く最も真実の一面を見せた。心配し、願い求めている。

彼女だって見殺しにするような人間ではない。

彼が誠心誠意頼んでくるのに、どうして無視できようか。

もし彼がまだあの無関心で謎めいた狐のままなら、きっと相手にしなかっただろう。

でも今は、ただ母親のために彼女に治療を頼みに来た、素直で親孝行な息子に過ぎない。

大豆田秋白も何がどうしたのか分からなかったが、彼女の肯定的な一言を聞いて、目が熱くなった。緊張と心配の後、手のひらには冷や汗が滲み、体がふらつき、手すりを軽く支えながら、重々しく「ありがとうございます」と言った。

水野日幸は何も言わず、歩き去った。

大豆田秋白は彼女の去っていく背中を見つめ、口元に笑みを浮かべた。

水野日幸が教室に戻ったとき。

石田文乃も既にカバンの用意を済ませ、豪快に手を振り、自信満々に「行ってくるわ、安心して、一位を取って帰ってくるから！」と言った。

水野日幸は入り口に立ち、真剣な表情で彼女を見つめた。「センターで輝けますように、石田文乃さん」