第460章 その時は泣かないで

石田文乃は正々堂々と弁解した。「それは一目惚れよ。一目見て魅了されて、頭が反応できなかっただけ。彼女が美人なら、なぜマスクをつけているの?」

山本雅子は自分が言い訳では彼女に勝てないことを知っていた。終わりのない議論になるだけなので、もう争わずに伊藤未央の方を向いた。「行きたいなら、私が一緒に行くわ」

彼女たちの言葉が終わるか終わらないかのうちに、曽我若菜が謎めいた講師の出雲先生の方へ向かっていくのが見えた。

この謎めいた講師は出雲姓で、出雲穹という名前。なかなか格好いい名前だが、芸能界を見渡しても、この人物の名前を聞いたことがない。

講師の個人プロフィールによると、H国の練習生の指導者だというが、彼女はH国で3年間練習生をしていたのに、どれだけの指導者を知っているわけでもない。