第462章 虎を描いて犬に似る

夏目弥生の視線のせいなのか、その場にいた他の講師たちも、一斉に水野日幸の方を見つめた。

この謎めいた講師は、評価が始まってから今まで一言も発さず、多数決に従うだけの存在だった。

例えば、五人のうち三人が練習生Bを選べば彼女もBを選び、Aを選べば彼女もAを選び、意見を求められても「頑張り続けてください」の四文字しか言わなかった。

今の状況で、夏目弥生が突然彼女を指名したのは、彼らの中で見せかけだけの人物が混ざっているのに耐えられなくなり、恥をかかせようとしているのだろうか?

この謎めいた講師出雲穹について、彼らは皆分かっていた。投資側から送り込まれた飾りに過ぎず、一票否決権があるとは言っても、実際はそうではない。

彼女の一票否決権は相対的なもので、彼女以外の五人の講師の過半数が彼女の決定を否定すれば、一票否決権は無効となり、講師たちの総意が優先される。