第503章 痛みで気を失う

良き教養と骨の髄まで染み付いた紳士の風格が、藤田清輝に傍観を許さず、避けることもできなかった。彼女を支えた瞬間、馴染みのある感覚が全身に広がった。

水野日幸は突然の脚の痛みで、反射的にエレベーターの手すりを掴もうとしたが、全く掴めなかった。心臓を刺すような痛みで力が抜け、自分が衝突するのを見るしかなかった。

藤田清輝は眉を少し下げ、彼女の汗で濡れた額を見た。サングラスが落ちた瞬間、その表情が全て彼の目の前に現れた。眉間にしわを寄せ、極度の苦痛の表情を見て、彼の心臓が急に締め付けられた:「日幸」

水野日幸は痛みで一瞬頭が真っ白になり、目の前がぼやけた。少し良くなってから顔を上げ、彼の姿を認識した瞬間、目の前が暗くなり、体が突然力を失い、全ての意識を失って安心して気を失った。

「日幸!」藤田清輝は焦りの声を上げながら、彼女の倒れかけた体を受け止めた。

エレベーターはまだ上昇を続けていた。

藤田清輝は番組スタッフに必ず医師が同行していることを知っていた。冷静さを保とうと努め、彼女が本当の身分を他人に知られたくないことを思い出し、上着を脱いで彼女の全身を覆った。

エレベーターが止まった瞬間。

藤田清輝は直ちに飛び出し、焦りながらスタッフに叫んだ:「医者を呼んでください、早く医者を!」

スタッフは驚いて固まってしまい、普段の気品ある冷静さを失い、まるで狂ったようにエレベーターから飛び出し、医者を呼びながら走る、彼らの憧れの藤田スターを見つめていた。

「早く、医者を呼んで!」藤田清輝は心の中では焦っていたが、幼い頃からの教養で礼儀正しく彼らに言った:「お手数ですが」

スタッフはようやく反応し、誰も遅れを取るまいと、すぐに同行の医師に電話をかけた。そして藤田スターが少女を抱きかかえて、自分の宿舎に向かうのを見た。

そう、少女に違いない。藤田スターの腕の中で、小さな塊のようだった。

番組スタッフが後について行こうとした時。

藤田清輝は振り返って彼らを見た:「医師だけお願いします」

そして。

ドアがバタンと閉まった。

番組スタッフは顔を見合わせ、興味津々の表情で、藤田スターが抱いていたのは誰だろうと。

藤田スターのあの取り乱しようを見ると、きっと彼が大切にしている人に違いない。