練習生の棄権問題について、最終的には曽我廣波の意見を聞く必要があった。彼が来るのを見て、皆が挨拶をし、彼を見つめた。
曽我廣波は困惑した表情で、まず木村鷺に二言三言声をかけ、慰めた。副局長の姪だから、それなりの面子は立てなければならない。
この子の成績も悪くなく、順位戦では毎回トップ10に入り、最近では8位まで上がってきていた。毎回順位を上げていたのに、準決勝を前にして、重要な時期にこんなことが起きてしまった。
彼も聞いていた。階段で足を滑らせて転んでしまったのだと。
谷川陽は曽我廣波が木村鷺との会話を終えるのを待って、彼に意見を求めた。「曽我監督、この子は番組に続けて参加したいと言っていますが、何か方法はありませんか?」
曽我廣波は眉をしかめ、難しい表情で考え込んだ。すぐに藤原遥たちと同じ答えを出した。「木村鷺選手の健康が一番大切です。」
「監督、木村鷺選手はここまで頑張ってきました。棄権するのは惜しいです。車椅子で番組に参加させることを提案します。」水野日幸が突然口を挟み、続けた。「ファンたちも木村鷺選手の強さと忍耐に感動して涙するでしょう。」
木村鷺は曽我若菜を困らせるための道具に過ぎない。舞台に上がらせても構わない。どうせ8位で、上位7人とは大きな差があり、そこまで上がることはできないだろう。
彼女が曽我若菜を陥れようとしたのは、曽我若菜にケガで棄権させ、デビュー枠を空けて自分が這い上がろうとしただけではないか。
曽我廣波は少し考えてから、理屈はそうだが、すぐには承諾できないと思った。「夕子先生の言う通りですね。他の人とも相談して決めましょう。」
木村鷺はその時、感謝の眼差しで夕子先生を見つめ、彼女を救世主のように思っていた。夕子先生は普段は冷たそうに見えるが、心は優しい。
曽我言助や曽我若菜とは違って、腹黒い嫌な奴らじゃない。
曽我若菜はこれで終わりだと思っているのか?甘い考えだ。彼女は今このような状態になり、デビューは無理になったが、彼女がいる限り、絶対に曽我若菜を楽にはさせない。決勝まであと一週間ある。まだまだチャンスはある。
他の講師たちも、夕子先生がそう言うなら、と同調した。棄権するかしないかは、結局番組スタッフのリーダーの一言で決まることだ。番組に続けて参加させたければ、方法はいくらでもある。