第508話 私を妬むバカがいる

練習生たちは集まって、それぞれ思うところがあり、声を潜めて仲の良い友達と小声で話し合っていた。

数回の選抜を経て、残ったのは28人だけだった。曽我若菜と木村鷺が食堂に来ていないので、実際には26人しかいない。広い食堂は少し寂しく感じられ、数人ずつ固まって座り、距離も離れていたので、小声で話しても聞かれる心配はなかった。

「曽我若菜が無事で本当に良かった。木村鷺は本当に残念だわ。彼女にはデビューできる実力があったのに」と、一番外側のテーブルに座っている女の子が小声で言った。

一緒にいた女の子は何も言わず、皮肉っぽく笑いながら、別のテーブルを指さして言った。「草部葵、見てよ。佐藤嫣がどれだけ喜んでるか。もし曽我若菜も脱落していたら、彼女は7位だったのよ。私には彼女のファンが何を好きなのか分からないわ。あの狂った性格?あなたの方が実力があるのに、本当に悔しいわ」

「他人の不幸を願うべきじゃないわ」と草部葵は言った。彼女は以前、木村鷺や曽我若菜と仲が良かった女の子の一人だ。そう言いながらも、嬉しそうな佐藤嫣を見て嫉妬で胸が張り裂けそうになりながら、心にもない言葉を続けた。「佐藤嫣も実力があるわ。私と変わらないくらい」

元F組の最下位だった佐藤嫣が、一回一回の競争で着実に順位を上げ、最近の順位では彼女の9位を追い抜いて、彼女を10位に押し下げたのだ。

佐藤嫣がいなければ、今頃は名実ともに8位、デビューまであと一歩という8位だったのに。でも仕方ない。自分の運が悪かったとしか言えない。

8位と9位は実際、大きな違いはない。どちらもデビューできる順位ではないのだが、それでも納得がいかない。今回の順位決めでは、絶対に自分の順位を取り戻してみせる。

「彼女に何の実力があるっていうの。あなたの順位はずっと安定して9位だったのに。前回はただの偶然よ。佐藤嫣がファンの前で可哀想な演技をして、ファン票で辛うじて勝っただけじゃない」一緒にいた別の女の子も彼女を擁護した。

「まだチャンスはあるわ。もしかしたら7位以内に入れるかもしれない。みんなも頑張って」草部葵はカメラマンがカメラを担いで近づいてくるのを見て、急いで会話を終わらせた。