第407章 八つ当たり

藤田清義が彼女を訪ねて脅迫してから、彼女は藤田清輝と藤田清明との連絡を絶っていた。兄の件も今回の件も、本当に仕方がなくて彼に頼んだのだ。

お金も払った。前回、藤田清明に兄の検査報告を見てもらい、治療方針を相談した時、市場価格通り一億円を支払った。

今回は、緒羽様が二億円くれたので、明日彼に渡そうと考えていた。金銭の取引は、人情よりもずっと単純だ。

でも彼女にもわかっていた。藤田清明を知らなければ、いくらお金を払っても、機密だらけの私設研究所に堂々と入れてもらえることはなかっただろう。

結局のところ、お金は自分の心の安らぎを買うだけのもので、最終的には人情が頼りなのだ。

「日幸、彼らはお前の同情なんて必要としていない」長谷川深は少女の憂鬱な表情を見て、諭すように言った。「同情から彼らの好き勝手を許す必要もない」

特に藤田清義のような、傲慢で自分の考えが絶対正しいと思い込み、誰もが従うべきだと考える、便所の臭い石のような男には。

「はい」水野日幸は頷いた。言うのは簡単だが、実行するのは難しい。でも心の内を話し、諭してもらえたことで、すぐに気持ちを立て直すことができた。

長谷川深は少女がようやくリラックスしたのを見て、笑いながら言った。「最近、浅井家と医学研究所の件で話し合っているんだが、水野先生に少しアドバイスをいただけないだろうか?」

「本当ですか?」水野日幸は『水野先生』という言葉を聞いて、突然顔を上げ、瞳が輝いた。目の前のこの大物が浅井家に資金面で支援してくれれば、きっと素晴らしい研究所が建設できるはずだ。

藤田清美医学研究所と肩を並べるとか超えるとかいうのは、あまりにも非現実的だが、それほど差はないはずだ。少なくとも設備面では、遜色ないだろう。

「ああ」長谷川深は軽く返事をして、真剣に彼女を見つめた。

彼の計画は、すでに医薬業界に及んでいた。浅井長佑は彼の部下で、医薬業界はまもなく大きな変革期を迎えることになるだろう。

「設備です。まず設備が重要です。浅井家の設備は古すぎます。でも浅井家の株主たちは、医薬品開発が主で、医療実験は補助的なものだと考えていて、重要視していません。お金を出したがらないんです」水野日幸はこの話題になると活気づいた。