宿屋の中。
山口深喜は突然目を上げ、手に持っていたグラスを入り口に向かって投げつけた。矢のように、風のように、鋭い殺気を帯びて。
入り口で座り込んでいた小さな乞食は、グラスが胸に命中し、地面に倒れ込んだ。
周りに潜んでいた乞食たちは、仲間が打たれて生死不明になるのを見て、血気にはやり、一斉に山口深喜に襲いかかった。
乞食の群れの中で、最も小柄な影が特に目を引いた。打狗棒術は鋭く、目にも止まらぬ早さで、わずか数手で、その実力の程が窺えた。
この実力とは、物語の中の乞食たちの実力ではなく、俳優自身の身のこなしと実力のことだ。この小さな乞食は他でもない、水野日幸その人だった。
玄人が一手打てば、腕前は明らかだ。彼女の一挙手一投足は、自然で流麗な完璧さを保ち、一目で練達の者だと分かった。