一橋渓吾と水野日幸は足を止めた。
王丸碧は笑みを浮かべながら水野日幸を見つめた。「この方、演技がとてもお上手ですね。女優さんですか?」
彼は彼女を見たことがなかった。もし芸能界にこのような天才女優がいたら、絶対に気づかないはずがないし、今まで埋もれたままのはずがない。
となると、ただ一つの理由しかない。彼女は演技経験がないのだ。そうなると、この才能は恐ろしいほどだ。
一橋は生まれつき才能があったが、最初に演技を始めた時は指導が必要だった。彼女は一橋とは違う。まるで生まれながらにして演技ができるかのようで、指導も必要としない。
水野日幸は首を振った。「違います」
王丸碧はようやく望んでいた話題に触れることができ、興奮を抑えながら言った。「では、演技の世界に興味を持ってみませんか?」