第572章 兄弟を殺そうとするのか!

藤田清義の深く冷たい瞳は鋭く、一瞬で水野日幸の足首に目が留まった。そこには切り傷があり、血が流れ出ていた。

タンスの中の物音も、彼の鋭い聴覚から逃れることはできなかった。三男の声に間違いなかった。

一瞬のうちに、彼は呼吸が荒くなり、血液の流れが速くなるのを感じた。何かが心の中から飛び出そうとしているかのようで、彼女の足首から視線を移し、彼女の顔を見つめ、その眼差しには明らかな探究心が宿っていた。

彼女は本当に凄い。会うたびに違う顔を見せる。デザイナーの中森茜は彼女で、名医の九州も彼女で、作詞作曲家の夕子も彼女で、脚本家の出雲七も彼女だった!

水野日幸は内心で運が悪いと呟いた。早めに逃げれば藤田清義を避けられると思っていたのに。今後このような事があっても、絶対に会うことは承諾しないと。