水野日幸は彼女のノートを受け取り、真剣に目を通し始めた。
これは何というゴミを書いているんだ?よくもこんなものを見せに来られたものだ。言いすぎると彼女の心を折ってしまいそうだ。
曽我若菜は心の中で緊張していたが、それ以上に期待に胸を膨らませていた。誰もが夕子先生の指導を受けられるわけではないのだから。彼女は何と言うだろう?どんなアドバイスをくれるだろう?
10秒後。
水野日幸は彼女にノートを返し、たった二文字の評価を下した:「とてもいいわ」
曽我若菜は血を吐きそうになった。用意していた言葉は、この二文字で喉に詰まってしまった。彼女は最後まで読んでいないのに評価を下したのではないかと疑った。
いい?
確かに自分に自信はあるが、そこまで自己認識を欠いているわけではない。日本歌謡界の期待の星と呼ばれる作詞作曲家の目から見て、自分の書いた曲が「とてもいい」という評価に値するとは思えなかった。