第490章 虎の背から降りられない

彼女は木村鷺たちが冗談を言っていたと説明しようとしたところだった。

しかし、石田文乃が再び声を上げ、先頭に立って騒ぎ始めた。「曽我若菜さんは本当にすごいですね。彼女は私たちの模範です。私たち全員が彼女を見習って、次の公演では自分で作詞作曲と振り付けをするように頑張りましょう。夕子先生、私の言うとおりですよね？」

水野日幸もこのように石田文乃に事態が動かされるとは思っていなかった。曽我若菜は進退窮まり、うなずいて「うん」と肯定的な返事をした。「曽我若菜練習生は、とても優秀です」

練習生たちは、夕子先生のこの言葉を聞いて、心の中で言い表せないほどの嫉妬を感じた。再び曽我若菜に対して、本心からであれ建前であれ、とにかく彼女を最高点まで持ち上げた。

曽我若菜はここまで追い詰められ、本当に進退窮まっていた。この時点で「そんなことを言っていない」と言えば、人々から軽蔑され踏みにじられ、彼女は無能だと言われる結果になることを知っていた。

この腹黒い下衆どもは、わざと彼女を恥をかかせようとしているのだ。彼女たちなんて何者だ、彼女の失態を見たがって、そんなに面白いのか？

彼女たちはただ彼女の才能を妬み、実力を恐れているだけだ。

「わあ、これが公演の曲なの？」どこかの練習生が曽我若菜のノートを手に入れ、大げさに羨ましそうに叫び、真剣そうに読み始めた。

曽我若菜のノートは、練習生たちの間で回し読みされ始めた。見ながら感嘆の声を上げ、理解できてもできなくても、とにかく「いいね」と言わなければならなかった。結局、夕子先生が褒めた曲なのだから、当然レベルが高いはずだ。

木村鷺たちは横に立って、曽我若菜の表情を見ながら、内心で喜んでいた。Aクラスの席を守ったんでしょう？センターポジションでしょう？すごく優秀なんでしょう？

そんなに優秀なら、先輩のステージをカバーするんじゃなくて、自分でオリジナルを作ればいいじゃない！

曽我若菜の表情は次々と変化し、今は目から毒を含んだ刃物を飛ばして、その場にいるこれらの下衆どもの心臓を一人一人刺し殺してやりたいほどだった。