すぐに。
入り口にいた人たちは話しながら去っていった。時刻は午後6時、練習生たちの練習が始まる時間で、廊下は静まり返り、誰もいなくなった。
水野日幸は黒いパーカーを着て、フードを被り、誰もいないことを確認してから、素早く部屋を出て、エレベーターに乗り、階下へ降り、道路の向かい側に停まっている黒いマイバッハへと真っ直ぐに向かった。
曽我若菜と木村鷺の二人は、30分の休暇をもらい、女性用の日用品を買いに一緒に出かけた。タクシーを降りると、水野日幸がマイバッハに乗り込む姿が一瞬見えた。
木村鷺の瞳は急に細くなり、一目で水野日幸だと分かった。番組が正式に放送された初日に、エレベーターで水野日幸を見かけ、新しい練習生だと思っていたが、それ以来会っていなかった。
しかし今、なぜ彼女が練習生の研修ビルから出てきたのだろう?番組制作のため、この周辺は全て規制され、厳重に管理されており、出入り許可証がない人は入れないはずだ。