「はい」水野日幸は考えることもなく小さな頭を縦に振り、瞳を動かして彼の表情を観察し、何か見られてしまったかどうかを確認した。
「じゃあ、二枚のパスを買おうか?」長谷川深は画面を見ながら彼女に尋ねた。
「三枚にしましょう!」水野日幸は頷いて、葛生の方を見た。
何をするにしても、何で遊ぶにしても、お兄さんと一緒なら嬉しくて、両手両足を挙げて百パーセント賛成で、目の中も心の中も喜びでいっぱいだった。遊園地のフェスティバルは、デートにぴったりの場所だった。
葛生は返事ができなかった。ボスが二枚と言ったということは、この邪魔者である自分を一緒に行かせたくないということだ。なぜ水野お嬢様はそれを理解していないのだろうか?
長谷川深の目の奥底で、暗い自嘲の波が揺れていた。魂さえも震えているようだった。彼は彼女が何を考えているのかを知っていたが、それでもなお断固として「二枚だ」と言った。
この不具者の自分では、やはり不便なのだ。
彼は彼女と一緒にいる時に、いつも誰かが付いているのは嫌だった。たとえいつも彼に付き添っている葛生でもダメだった。今回は二人きりでいたかった。
「私は遊びませんから、遊びません」葛生は空気中の自分に向けられた圧迫感が強くなったのを感じ、急いで断った。
「じゃあ二枚で」水野日幸は彼の体が一瞬硬くなったのをはっきりと感じ、心まで痛くなった。彼の心を傷つけ、自尊心を傷つけてしまったのだろうか。
さっきの言葉は、ただ無意識に答えただけだった。今になって取り消したくても、後悔しても、もう取り返しがつかない。
長谷川深はもう何も言わず、白い玉のような長い指でタブレットを操作していた。車内は一時、お互いの呼吸が聞こえるほど静かになった。
彼の反応は強すぎたのだろうか?
こんなに固執するべきではなかったのかもしれない。彼はもともと不具者で、これは抗えない事実だ。多くのことは、他人の助けを借りなければ、自分が馬鹿に見えたり、笑い者になったりするのを避けられない。
この瞬間、空気は不気味なほど静かになった。運転席の葛生こそが、今この状況を最もよく理解できる人物かもしれない。バックミラーを通して、二人が躊躇い、この忌まわしい沈黙をどう破るべきか考えているのを見ていた。
時間はとても短く、たった十数秒のことだった。