飴はすでに塀の上に飛び乗っていた。水野日幸が降りてくるように呼びかけると、隣の庭を名残惜しそうに振り返ってから、彼女の後をついて歩いていった。
水野日幸が戻ってきたとき、石田文乃も飴を呼んでいた。小さな子が入ってくるのを見て、美美の頭を軽く叩きながら言った。「ほら、誰が来たか見てごらん?」
飴はさっきまで少し元気がなかったのに、美美を見た途端に活気づき、さっと飛びついていった。
美美は高飛車な猫で、気高く首を上げて飴を見つめ、その親密な行動にとても冷たい態度を示したが、その目には満ち足りた慵懶さが漂っていた。それは、完全にリラックスしているときにしか見せない表情だった。
石田文乃は水野日幸を見ながら言った。「なんで飴をもっと早く飼わなかったの?」
水野日幸は不思議そうに彼女を見つめ、目に大きな疑問符を浮かべた。