第596章 すみません、水野日幸はこの寮にいますか?

「日幸、アイドルとか好きなの?」立山蘭は積極的に水野日幸に話しかけた。

映画スター藤田清輝といえば、道端で適当に誰かを捕まえても、おそらく知っているだろう。たとえ知らなくても、その名前は必ず聞いたことがあるはず。映画史上最高の日本人名優だ。

「興味ないわ」水野日幸は丁寧に答えた。

立山蘭は彼女の冷たさや距離感を感じていないかのように、しつこく近づいて続けた。「私はファンよ。一番好きな歌手は城戸修で、一番好きな俳優は光輝兄なの」

水野日幸はそっけなくうなずいた。

立山蘭は空回りしたものの、まだ笑顔を浮かべ、気まずい空気を避けるため、一人で藤田清輝の話を始めた。心の中では水野日幸を百八十回も罵っていた。ただ家がちょっと金持ちで、才能があるだけじゃない?何をそんなに威張っているの、何が高慢なのよ。