大方笑子は思わず口に出しそうになった。夫が買ってくれたものは何でも好きだと言いたかったが、最後の理性を保ち、興奮した声で「美味しい、全部美味しい」と言った。
「私もそう思います」と江川薫も頷いた。
なんて素晴らしい運命なんだろう。彼女は夫を生で見ることができた。目の前で、生きていて、話して笑っている夫を!
二人は大きな喜びに浸り、目を離すことができず、ずっと彼を見つめていたかった。まるで一瞬でも目を離せば、彼が消えてしまうかのように。
藤田清輝は水野日幸の頭を優しく撫でながら、笑顔で尋ねた。「これから軍事訓練があるけど、何か足りないものはある?景山昱に買いに行かせるよ」
江川薫は目が釘付けになり、羨ましくてたまらなかった。頭ポンポン、夫の頭ポンポンよ、なんて優しくて思いやりがあるの!
大方笑子も羨ましさでいっぱいだった。これが日幸が言う「親しくない」関係?仕事上の関係?だとしたら、真面目に教えてほしい。ミルクティーと綿菓子を贈り、頭を撫でて、それでも親しくないなら、どうしたら親しいと言えるの?
「足りないものはないわ。母が全部用意してくれたから」水野日幸は彼の手を避けることなく、頭を撫でられるままにして、顔を上げて彼を見た。「道中、誰にも気付かれなかった?」
藤田清輝は笑いながら言った。「さっき来る途中、兄の真似をしてきたんだ」
水野日幸はすぐに理解し、深く納得して頷き、彼に向かって親指を立てた。それはいい方法だ。藤田清義のような人を寄せ付けない、近づくだけで凍えそうなオーラは、確かにいい方法だった。
大方笑子たちは、彼らが何を話しているのか理解できなかったし、聞いてもいなかった。ただ夢中で藤田清輝を見つめ、いくら見ても見飽きることがなく、千年でも万年でも見続けられそうだった。
「今行く?それともしばらくしてから?」水野日幸が彼に尋ねた。
藤田清輝は苦笑いを浮かべた。来たばかりなのに追い払おうとするなんて、この小娘は彼に会いたくないのだろうか。彼は彼女に会いたかったのに。『国民的アイドル』の収録で彼女に会って以来、会えていなかったのだから。「どれが君の部屋?」
水野日幸は彼の後ろを指さした。