第516話 夕子先生、この見覚えのある感じ

一週間の時を経て、決勝戦は遂に世間の疑惑の声の中で幕を開けた。

視聴者やファンたちは、非難や疑問、期待を抱きながらも、3ヶ月間追いかけてきたオーディション番組をそう簡単には手放せず、テレビの前に座るか、パソコンやスマートフォンを開いて、番組を見る準備を整えていた。

ファンたちと比べて、最も緊張していたのは練習生たちだった。準決勝での順位は、曽我若菜が評価に参加しなかったため、最終結果は以下の通りとなった。

1位：伊藤未央

2位：石田文乃

3位：山本雅子

4位：柳田浅未

5位：関口柔

6位：木下静香

7位：佐藤嫣

他の女の子たちと比べて、佐藤嫣の順位上昇が最も注目を集めていた。彼女は元々9位で、デビューできそうにも見えなかった。

しかし、木村鷺の怪我と曽我若菜の盗作事件の後、彼女は9位から一気に7位まで順位を上げ、ネットユーザーからは「天命の子」「幸運の鯉」と呼ばれ、その運の強さは尋常ではないと言われていた。

最終決勝戦に至っては、順位は通常大きな変動は見られないものだった。逆転劇などは小説の中にしか存在せず、現実では可能性は極めて低く、デビューメンバーはほぼ確定していた。

しかし、曽我若菜への投票が、ここ数日で突然急上昇し、決勝戦開始前には僅差で佐藤嫣を上回り、暫定7位となっていた。

楽屋では、練習生たちがこの件について議論していた。デビューが確定している石田文乃たちを除いて、残りの希望のない練習生たちの曽我若菜への敵意は、それほど大きくなくなっていた。

どうせ曽我若菜がデビューしようとしまいと、自分たちにはデビューの機会は回ってこない。中には騒ぎを楽しむ者や、自分が良くならないなら他人も良くならないでほしいと思う者もいて、曽我若菜のデビューを望み、このグループがどれほど酷いことになるか見たがっていた。

曽我若菜は、この一週間、事件の翌日以外は練習に参加せず、残りの時間は普段通り、全員と一緒に練習を行っていた。

講師たちは皆プロフェッショナルで、表面上の対応は完璧にこなしていた。曽我若菜に対してどのような考えを持っていようと、会話や接し方に以前との違いは見られなかった。

谷川陽たちはメイクを終えると、夕子先生の到着を首を長くして待っていた。ついにドアが開いて夕子先生が入ってきたのを見て、やっと不安な気持ちが和らいだ。